ヒヤリとする冷たさと
じめりとする湿気さが漂う空間にぽつんと捨てられた
そんな感覚。
悪いことをしたのは間違いではない。
でもただ夢を、約束を果たそうとしただけ。
だけど…それは許されない罪。
だからこうして処罰されている、悲しき自分。
その感覚に浸って、もう丸3日になる。
来たことがあるのは安い飯を持ってくる兵士だけ。
ジェイドも、ピオニーも、ネフリーさえも
誰も会いにはきてくれなかった。
わかっています。所詮は一人。
逃げるすべを考えようともしなければ
生きながらえようとも考えてはいない。
ただ、呆然と時を過ぎるのを待っているだけ
ただそれの繰り返し。
もうなれた。そうすることになれてしまった。

でも…時は変わった。

「なんていう馬鹿面しているんですか?」

この空間に、光が差し込んだ。

「じぇい…ど?」

空気が…変わった。

「この空間に慣れましたか?汚い貴方には最適だと思ったんですが。」

「…」

「…反応してくれないのも、つまらないですね。サフィール。どうやら私はくるべきじゃなかったようですね。」

光が逃げていく。
香りが消えていく。

嫌だ。
ヤダ。
いかないで…

「じぇいどっ!」

「…」

気がつけば小さな隙間から私は手を伸ばしていた。
届かないと知りながらも
触れないと知りながらも
行方がないとわかっていても
手はジェイドへと伸びていた。

戻したくても動かない。
戻すのが怖い。
何故伸ばしたか、わからない。

貴方に戻ってほしいから?
貴方に届くと思ったから?
すこしでも…抵抗してみようと思ったから?

わからない…何故私は手を伸ばしたの?

「…何泣いているんですか?サフィール。」

隙間を通って私の頬をぬぐってくれた
暖かいぬくもり。

「じぇいど…?」

「頑張りなさい。サフィール。貴方みたいな鼻たれじゃまだ私になんて届きません。」

「…」

「でも…それまで待ってあげましょう。これは約束です。ただし私が死なないうちに早くでないと、私はどんどん先に行きます。」

「じぇいど…。」

「だから本気で手を伸ばしてみせなさい。なんなら捕まえてごらんなさい。貴方に出来るものならね。」

「…約束ですよ…。」

「鼻。垂れてますよ。馬鹿面。」

その光は、あるべき場所へ帰っていった。
一瞬の出来事。
それはこの残り香のように甘いひと時。
忘れられぬ瞬間。
希望の持てた一瞬。

私はそっと腕を戻し、拳に1粒の涙をこぼした。

脱走したのは、次の日のこと…



約束をしよう、それはとてもはかないものかもしれないけど。

お題はこちらから拝借