「なぁなんでサフィールが嫌いなんだ?」
愛しのぶうさぎを抱き、ジェイドの仕事を邪魔するように抱きつく。
ケテルブルグをはじめ、マルクトを束ねるお偉いさんにはどうしても見えない。
ただぶうさぎを愛する子供に等しい。
でも国民からの支持は誰よりもある、信頼の強い陛下であるのは間違いない。
だがジェイドからみればただのウザイ幼馴染にしか過ぎない。
少しだけ、サフィールより信頼度が上なだけ。
「愛していますよ。餌やり水替え。掃除、毛づくろい、散歩に…
すべてやってあげてるじゃないですか。」
「あのなぁ…誰が【俺のサフィール】を愛せといった!ディストのほうだよ。」
「生憎薔薇は嫌いなものですから。」
茶化すようにめがねの奥から笑みがこぼれた。
(嘘付け…嫌いじゃないんだろ?好き…だったんだろ?)
あれは20年前の先生の授業の後のこと…。
サフィールがジェイドのすそをひっぱって鼻水たらしながら質問したときのこと。
「じぇいど…。」
「何。」
まるで汚物を扱うような眼のジェイドに対し、大好きなものをみて嬉しがっているサフィール。
2人の思いはここからして交わることなんてなかった。
「じぇいどはどんなお花が好き?」
「生憎植物には興味はない。」
「そっか…。」
どこか寂しがるサフィール。彼だってきっと返答はこうなるであろう予想したはず。
けどどこかでいってほしいと、いってくれるようにという願いはあった。
ただ届かなかっただけ。
「ん〜でもジェイドは強いて言うならバラだよな。」
その強い願いを後押ししてくれたのは、またこっそり授業に出たピオニーだった。
「ばら?」
「ほら。こいつむかつくけど綺麗だろ。でもその甘い香りに誘われたら
こいつの鋭い棘で痛い目みるんだ。だから薔薇だよ。」
「おや。貴方の割には良い例えしてくれるんですね。」
「じゃあじぇいどの好きな花はばらなんだね!!」
「…そういうことにしといてやるよ。」
(…それからだろ。あいつが死神じゃなくて、薔薇ってこだわったのは。)
「気づいてんだろ?そんな思い。なぁサフィール?」
「ぶぅ」
「なんですか陛下いきなり…。」
「お前は薔薇だ。」
「はいはい。ほら陛下。時間ですよ。謁見の間へお戻りください。」
「ちぇっいくぞサフィール。」
2匹のぶうさぎはまた部屋を散らかして何事もないように戻っていった。
今度は立ち入り禁止令でもだそうか?なんてジェイドは考えていた。
「甘い香りに誘われたら棘で痛い目にあう…か。」
部屋に飾られた一輪の薔薇を素手ですくい、棘で自分の指を刺した。
鮮血の綺麗な雫がゆっくりと滴り落ちる。
残酷な…でも綺麗な何かがそこにはある。真紅の薔薇よりはるかに綺麗な何かが。
「サフィール…それでも貴方は私を愛しますか?」
痛いほどの想いをくれる可哀想な、私が大嫌いな貴方へ…。
あなただけのいちりんでありつづけるために
あなたというみずをすいつづけるために
わたしはあなたといきつづける…
お題はこちらから拝借