「私なんか死んじゃえばよかったですね。」

白い吐息とその声は、ケテルブルグの冷たい空気に放たれた。
午前0時の真夜中のこと。

しかしその言葉に返答はなかった。
独り言ではない。ただ、答えてもらえてないだけ。
返すほどの質問じゃなかったのか
あるいは私自身、そんな価値がないか…
でも、そんなこと本当はどうだってよかった。
ただ音としてこの想いを、この辛さを、この痛みを
空気に振動させて、貴方に届かせたかっただけ。
そうすれば少しは楽になれる気がしたから。
少しだけでも、この気持ちが貴方に伝わる気がしたから。


でも結果は空しく、もっと苦しくなっていた。
冷たく痛い空気が2人を包む。重苦しい…
沈黙は続くだけ。

一体彼は何を思っているのだろうか?
今、何を思って月を眺めているのだろうか?
あの振動は、彼の耳に届いたのだろうか…

ただ…不安が積もる。

「…そう…思う人もいるかもしれませんね。」

月夜に照らされて、彼はよく見えなかったが
でも確かに言った。
彼の振動は、確かに私の耳に届いた。聴こえた。

「じぇいど…今なん…。」

「貴方は沢山の被害を出しましたからね。目的のために。それは誰かを巻き添えにしてしまったでしょう。
 そういう被害者からみれば、貴方は悪魔です。死んで欲しいと願うのが当たり前です。違いますか?」

ジェイドの言ったことに嘘偽りはない。目的のために多くの犠牲をだしたのも事実。
それは死んで欲しかったと願う民もいたでしょう。

でも…

そこに貴方の気持ちはない返答です…

民なんてどうでもいいんです。

私は…貴方のコトバが聞きたいのです…

「私もありましたけどね。貴方がウザくてどうしようもなかったり。鼻水をつけた時は殺そうかと思いました。」

喜んでいいのか
あるいは悲しむべきなのか。
私にはわからなかった。

ただ、月光に照らされたこの白銀の世界の魅力に
ただ酔いしれるしか他なかった。
例えジェイドの発言でも
きっとただそんな発言だけ。
望んでいない
どっちでもいいのだ
私が死のうが生きようが…

「…でも、勝手に死なれても困ります。」

「ぇ?」

「勝手に死なれては、他人の迷惑です。あなたは私が処理しなければいけないのです。
 それが飼い主の役目ですからね。大変ですよ、ペットを飼うということも。」

「…」

「でも…本当に勝手に死なないでください。」

「…?」

「貴方の最後を見れるのは私だけです、他の人になんか見せません…。」

「ジェイド…?」

「愛しています…サフィール。」

お互いに冷たいその唇が、重ね合わせることで熱を帯びた。
マイナスとマイナスの法則。

「私も愛しています…ジェイド…。」

永遠にも似た、このひとときに

愛を確かに触れた気がした…



お題はこちらから拝借