機械と共に貴方は汚いこの空で消えていった。

最後までくだらない言葉を残し。

還って来ない人の名前を告げ

塵ひとつ残らず。

消えていった。

残していいものは消え、いらないものだけ残った。

馬鹿…。


「じぇいど…。」

「サフィール?!…夢…ですか…。」

暗く、音の無い空間。
聴こえるのは生と死の鼓動。
お互いの呼吸。
無垢な世界。沈黙の空間。
悲しすぎるほどの冷たい空気
そこにいる、冷たくいとしい人。

「結局。貴方は約束を守ってくれませんでしたね。」

「まだ馬鹿いってるんですか。そんなこと守れないってその頭じゃわからないんですかね?!」

「そうするしか…昔の貴方は戻ってこないですからね…。」

「あの頃の私はもういない!!わからないのですか?!過去にとらわれてる馬鹿が!!」

「わかっていますよ…。あの頃の貴方はいないってことくらい。」

はじめてディストがことを受け入れた。
ただ…信じがたい一言。
そして気づいた
めがねの奥の、綺麗な雫。
泣いている…。

「でも、こうでもしなければ…私と貴方とのつながりも、過去も…消えてしまうじゃないですか…。」

間違っていた。
下僕とか、飼い犬とか…そんなの間違っていた。
死というものを理解した気がした。

心のそこで、失いたくないと思えた

「馬鹿ですよね。それでも…私はこの想いを諦めることは出来なかったんです。」

笑ってください。
枯れた微笑と微かなあれた息。
そして壊れそうな声。
放っておけなかった。

気がつけば、彼を抱きしめていた。

「じぇいどっ?!」

ありえなかった。
触れたくも無かった彼を。
まるで汚物を、家畜を扱うように接してきたのに
今はこうして自分から抱きしめている。
鼓動を感じあえている…

「どうして貴方はそんなに馬鹿なんですか?」

「じぇいど…?」

「【形】にしなければ、【つながり】になる…なんて誰が決めたんですか…?そんなことしなくたって…つながりあえるでしょう。」

優しい言葉をかけても
自分がそれを断ち切っていたのは事実。
きっともっと自分が優しくしていたら
最低限、普通の人間を扱うように接していたら
彼は変わっていただろうか?
こんな馬鹿なことを考えずに
もしかしたら生き延びていたかもしれない。
自分のために、生を受け入れてくれたかもしれない…

「最後に…」

「?」

「死ぬ前に聞けてよかった…。貴方を愛してよかった…。」

泣き顔が、とても綺麗に
とてもいとおしく感じた。
死を恐れている顔。
でもどこか嬉しそうな顔。
これを…真に受けたことがあっただろうか

「サフィール?」

そばにあった温もりが
遠く離れていった。
ぐっと押されて、するとどんどん遠くなっていって。
温もりが冷たさに変わるくらいになって…

「さようなら…ジェイド…」

「サフィール?!」

手を伸ばしても届かない。
彼は遠くに行ってしまった。
自分じゃ届かない、随分遠くへ。

「サフィールっ!!」

現実に戻された自分は
ただ泣くことしか出来なかった。
誰よりも愛した、あの男を
供養するかのように…。

自分の技術にのめりこんで
自分の恩師を追いかけすぎて
自分との約束を果たすがために
彼は死んだ。

私が殺した。

私が逝かせた。

薔薇の咲かない

苦しい世界へ。




薔薇が…散った。